吃音を題材にした名作漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」

吃音を題材にした名作漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」

吃音,漫画

吃音者の心理描写が秀逸な漫画

吃音を題材にした珍しい漫画があります。

タイトルは「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」というものです。吃音症を持つ一人の女子高生が主人公で、吃音にまつわる数々の苦難を取り上げながら、乗り越える勇気を描いた青春ストーリーです。元々はウェブ連載でした、それらを1冊の漫画としてまとめたものになります。1巻簡潔で読みやすく、作者も吃音症で悩んだ経験を持っているため、状況のディテールが非常に細かいのが特徴です。

吃音というものをよく知らない方にも、ぜひ読んで欲しい1冊です。

作者も吃音の症状に悩まされた過去がある

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の作者である押見修造さんは、吃音に悩んだ自分の過去の経験をもとにこの作品を書き上げました。押見さんはこの作品を書いているときに感じていたのは「吃音をもっと色々な方に知って欲しい。でも吃音を重い障害のようには思って欲しくない」というものです。

実際、作中では「吃音」という名称は一切でてきません。また、作品の空気も常に重苦しいものではなくて、思わず吹き出してしまうような面白い瞬間もたくさんあります。

冒頭では、高校入学後のクラスみんなの前での自己紹介の場面が描かれています。吃音を持っている方なら、うまく名前が言えなくて嫌だったなと思い返すこともあるかもしれませんね。

主人公である志乃ちゃんも、自分の名前で詰まってしまい、クラスのみんなから笑われてしまいます。その後もクラスの男子から話し方を真似されたり、辛い日々が続きます。

後書きでは、作者が吃音のせいで感じたストレスや、その後の自分の人生について綴られています。中でも、吃音のおかげで人の気持ちに敏感になり、人の表情や仕草から感情を読み取る力がついて、その結果漫画家になることができたというところには、感銘を受けます。

吃音じゃなかったら漫画家には慣れなかったとまで言い切れるのは、吃音を乗り越えて成功した立派な人であることの証明でもありますよね。

吃音という障害の漫画ではなく、正統派の青春ストーリー

ただ、この漫画は吃音という症状の辛いところだけを描いているわけではありません。むしろ、かなり正統派の青春ストーリーで物語は進んでいきます。

クラスにうまく馴染めない志乃ちゃんでしたが、じきに友達ができ、その友達と文化祭で歌を歌うまでに成長していくのです。志乃ちゃんは、歌ではどもらないタイプの吃音だったので、その歌を通して周りと気持ちを通わせることができました。日々、志乃ちゃんの成長していく姿を見ていると、思わず応援したくなります。最後の文化祭のシーンは特に見所で、押見さんの圧巻な筆力に息をのむばかりです。

事実、志乃ちゃんと同じように歌を歌っている間はどもらないという吃音者は多く、歌が吃音改善のきっかけになることもあるようです。

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、吃音がある方が主人公に感情移入して楽しむだけでなく、吃音を感じたことのない方が吃音者の言葉にできない気持ちを理解するバイブルとしてもおすすめの1冊になります。

子供にも読ませてあげたい漫画

吃音,漫画

吃音である子供に読ませてみるのももちろんオススメですが、私が特に良いと思うのは吃音の子が近くにいる普通の子供達に読ませることです。吃音の子にとって、話し方を笑われたり真似されたりすることは非常に辛く、吃音の症状をより酷くしてしまう原因の一つです。

しかし、子供は純粋で、ある意味では残酷でもあります。自分と違うこと、珍しいことに対して容赦なく触れてしまうのです。こういった世代には、論理的に言葉で説明するよりも漫画のような親しみやすい題材で、吃音者の気持ちを本人達に分からせるのが一番早くて確実です。無理矢理読ませることはないですが、家や学校などにさりげなく1冊置いておくというのも良いのではないかなと思います。

 

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